“力強くしなやかでキレのある動き”
スポーツ選手ならだれしもがこうした動きを求め、日々練習やトレーニングに励んでいることでしょう。
しかし、いくらいっしょうけんめい練習やトレーニングを繰り返してもこうした動きを獲得することができず、
「どうしてできないんだろう? いったい何が違うのだろう? 努力だけなら絶対に負けないのに…。」
と思い悩んでいる人も多いことでしょう。
こうした動きは、遺伝的な“素質”や“センス”に由来していて後天的には獲得できないと思い込んでいるコーチや選手も多くいるようです。確かに筋力・パワーを高めるためにウェイトトレーニングを行ったり、ダッシュを繰り返すようなスピードトレーニングを行ったりしても、一部の選手しか“力強くしなやかでキレのある動き”にはなりません。そのため、こうしたことが言われてしまうのかもしれません。しかし、本当に遺伝的な“素質”や“センス”だけでこうした動きができるかどうか決まってしまうのでしょうか?
遺伝的な“素質”や“センス”が“力強くしなやかでキレのある動き”に大きく影響している要因であることは確かでしょう。だからといって、こうした動きを獲得できないのかというとそうではありません。適切に行えば必ずできるようになるのです。その大きな要因のひとつが「正しいカラダの使い方」なのです。
ファーストステップでの“動きづくり”とは、よい動き、つまり「正しいカラダの使い方」を身につけてひとつひとつ積み重ね、さまざまなスポーツの局面で要求される“力強くしなやかでキレのある動き”を創り上げていくことです。
正しいカラダの使い方ってなんだろう?
「歩く」、「走る」、「跳ぶ」、「投げる」といった基本的な動きのほとんどは、だれに教わることなく自然に身についてきた動きです。そのため、ほとんど無意識に行えますが、よくよく考えてみると“手足”を動かすといった意識で行っていることに気づきます。つまり、肘や手首、膝や足首といった関節を動かそうと腕や脚の筋肉に力を入れるという意識です。
しかし、こうしたカラダの末端の筋肉に力が入りすぎてしまうと“力強くしなやかでキレのある動き”をすることができません。これでは、末端部が鞭のようにしならず、硬く重い動きになってしまうのです。
“力強くしなやかでキレのある動き”をするためには、むしろ腕や脚といった末端部の力は抜き、カラダの中心(体幹部)に近い大きな筋肉に力を入れることが必要になってくるのです。腕であれば肩関節の周辺、脚であれば股関節の周辺の筋肉やお腹や背中といった体幹部の筋肉なのです。一流選手の動きの感覚は、「脇を締める」、「お尻を締める」、「腰をキル」など体幹部に近い筋肉に力を入れる意識になっています。
スポーツ・パフォーマンスを高めるための「正しいカラダの使い方」とは、こうした“力強くしなやかでキレのある動き”を可能にする体幹部に近い筋肉に力を入れて動くことなのです。
ところが、「正しいカラダの使い方」をしようと思ってもなかなかうまく体幹部に近い筋肉に力を入れることができません。実際には腕や脚の筋肉に力を入れて肘や手首、膝や足首といった関節を動かす意識でさまざまな動きを行ってしまいがちです。
どうしてこうなってしまうのでしょうか? この大きな原因のひとつが“インナーマッスル”と呼ばれる筋肉にあるのです。